背に腹は代えられない

ーー自己犠牲をいとわない

”最後の手段”

 

今日、『背に腹は代えられない』という言葉を耳にしました。

なんとなく響き自体は聞き覚えがありつつも具体的な意味は不明だったので、早速Google検索してみました。

意味はズバリ、

事態が切迫すると、肝心なものを守るために、相当な犠牲をはらうのもやむをえない」こと。

 

会社ではわずかな犠牲もやむを得ない事態において、(人件費削減のため)従業員を一斉にクビ切りにし、会社を保とうとしますよね。

また、会社が経営不振に陥り、他の収益性のある会社や企業と合併・吸収(M&A)をすることも、会社を守るためには致し方ない事態といえます。

 

今挙げた会社の例は、「背に腹を代えられない」という状況とまさにピッタリですね。

これは赤字や倒産など差し迫った危機を回避するために取る「最後っ屁」です(笑)。

いわゆる「重要度の高い事案から排除していく」という意味合いが強いです。

 

しかし「背に腹は代えられない」の語源をたどると、本来の意味とは少し違うんですね。

人間のお腹には心臓や血管パイプなど、あらゆる生命維持に欠かせない組織や機能が詰まっています。

中国では「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」という、医学用語も存在しています。

ちなみに五臓とは心臓・肺臓・肝臓・腎臓・脾臓の5つの器官を指し、いずれも医療でメスを入れる重要な部位として解釈されています。

 

また、語源では武士が腹をきる際、よく「切腹」といった表現をしますよね。

ただ切腹は時代を降るにつれ、ハードルの高い自決行為として捉えられるようになったのです。

さらに自分の身を守るとき、大体の人は防衛本能が働いて背を丸めたりかがめたり…といった姿勢をとると思います。

 

極端な例ですが、通り魔が自分のお腹を刺そうとしてきたとき、その一瞬のうちに人間は背中を見せたり腹をそらしたりして自分の身を守ろうとしますよね。

人間のお腹というのは実に繊細な部位なんです。

1度深く刺されたら致命傷ですし、場合によってはそのまま帰らぬ人になってしまうこともあります。

 

まあ、確かに現実的な話をしちゃうと、背中を刺された人より腹を刺された人のほうが致死率はグンと高くなってしまうイメージですよね。

(いや、あまりに物騒すぎるのでやめておきます。)

 

これは先ほどの重要度とは違い、「緊急度の高い部位を優先的に守る」という人間の無意識的な防衛反応です。

会社の例との違いは「重要度」か「緊急度」であるかどうかです。

ただしどちらも切羽詰まった状況であることには変わりありません。

あくまで犠牲を払う部分が異なるだけの話です。

 

差し迫った危機を回避するために、従業員をオール解雇したり、会社存続のために経営権を他者に譲渡したり…といった、”誰かの犠牲を払ってでも”のニュアンスを強くおびています。

どちらかといえば「利己主義」的な感じ。

 

緊急度の場合は”自己犠牲を伴う”のはもちろんですが、それによって救われる命があったり、他の人にとっては利益になることもあり得ます。

したがって、「利他主義」的な意味合いが強いと思うんですね。

 

まあ、そこまで細かな違いはないので、そこまでシーン別に使い分ける必要はないかと思いますが(^^;;