ジョジョの奇妙な冒険

ーージョジョの奇妙な冒険1部

ジョースターの死まで

 

日本でも特に人気のある「ジョジョの奇妙な冒険」。その第1部を先日に見始め、すっかり沼にハマってしまいました。今は1週間も経たずして第9話を終えるという音速スピード。しかし、それほど自分を夢中にさせるジョジョの奇妙な冒険は、一体何が自分をそこまで夢中にさせているのか、少し検証してみました。まだ最終話までには程遠いので、深くは切り込みません。現状わかる範囲で分析を重ねていきたいと思います。

 

ーージョジョの奇妙な冒険とは?

 

ジョジョの奇妙な冒険は作者・荒木飛呂彦さんの描いた漫画作品です。漫画が2012年に正式リメイクされ、アニメ版第1部が放送されました。第1部前半(1〜9話)では主にジョジョおよびそれに付随する仲間キャラと、それに対抗するDIOと吸血鬼たちが徹底抗戦を繰り広げるという、至ってシンプルなバトルものとなっています。血塗られた忌まわしきDIOの正体から、DIOを倒すまでのジョジョの葛藤や苦悩など多くがリアリティのある心情描写となっており、共感性の高い人は悪の権化・DIOにまで同情を禁じ得ないレベルかもしれません。それほど深いストーリー構成となっています。

 

しかし作中では人間の頭部が飛んだり血を吸い取ったりなどの過激な描写が目立つため、夜中の視聴はおすすめ致しません。また、そういった描写に弱い人も視聴は控えたほうが良いかと思います。今の時代、特にコンプラの目が光るアニメ業界においてジョジョの奇妙な冒険だけはレーティングによる規制の影響を受けずに今もなお高い人気を保ち続けています。それは残酷な生々しい描写以上に深く考えさせられる奥行きのあるストーリー展開に定評があるからです。ここからは少しだけストーリーの一端を紹介し、自分がジョジョになぜここまでハマるのか、そういった分析も兼ねて以下に羅列していきたいと思います。

 

 

ーージョジョの奇妙な冒険1部

石仮面の恐るべき力・・

 

ある日、ジョナサン・ジョースター(本作の主人公)家に養子として迎え入れたDIOブランドーが「屋敷の財産を簒奪する」目的で養子になったという目論見をジョジョが看破しました。しかし、ジョジョはそのことを父親に言えず、2人は互いに競い合い、ライバル意識を高めていきました。DIOはその圧倒的超人パワーでボクシング勝負を挑んできたジョジョを返り討ちにしたり、ときにはジョジョの恋仲でもあるエリナのファーストキスを奪うなど、とことんジョジョを追い詰めていきました。しかし、2人はいつしか厳しい青春時代を乗り越えるにつれ、深い友情関係が生まれていました。(のちに吸血鬼と化すDIOですらもジョジョと過ごした青春時代を回顧し、ジョジョに対する情を捨てきれないシーンが出てきます。)

 

ある日、ジョジョの父親が病に伏せ、ある部屋で衝撃の手紙を見つけてしまいます。それはDIOジョジョの屋敷を乗っ取るために父親の料理に毒を混ぜ、身体を蝕ませていたという内容が書かれていました。ジョジョはすぐにDIOを問い詰めると2人はある種骨肉の戦いとも言えるバトルを始めましたが、ジョジョは戦いを一旦やめて父親の病気を治すための薬探しの旅に出ました。DIOジョジョ不在中、「石仮面」の存在に目をつけました。石仮面とは、その人の返り血を浴びたとき、グラグラと勝手にうごめくという奇妙な仮面です。そんな中、ジョジョは旅先で出会ったスピードワゴンとともに薬を見つけて帰還しましたが、DIOが怪しげな石仮面に手をつけていると知ったジョジョは父親を殺害する目的で毒を盛ったことを旨とする自白をDIOに強要し、DIOは窮地に追い込まれました。そして・・

 


「俺は人間をやめるぞ!ジョジョーーーーーーーッッッ」

 

こう絶叫しながら、DIOは石仮面をその頭に被せ、ついに人間を捨ててしまうのでした。石仮面は被覆者のパワーを何倍にも引き上げ、半ば不死身の体まで与えてしまうという、恐ろしい仮面です。DIOはとっさにジョジョの父親にナイフを突き刺し致命傷をおわせます。そしてジョジョの警察隊はDIOに一斉射撃を行い、DIOは血を吹き出してその場に倒れ込みました。しかし、ジョジョの父親はDIOに刺された傷がたたり、その場で息子(ジョジョ)のぬくもりの中で帰らぬ人となってしまいます。ジョジョは悲しみながらも奮い立ち、DIOと1体1の決闘を始めます。死闘の果てにDIOを追い詰め、屋敷の最上階からDIOを振り下ろして慈愛の女神像にジョジョの体を貫通させました。屋敷には火が回り、ジョジョは行き場を失いました。DIOは死んではおらず、ゾンビとして蘇っていました。

 

DIOとの戦いで受けた傷を癒したジョジョは大人になったエリナと再会します。エリナと周りを散歩していたところ、途中の道でツェペリという人物と出会います。ツェペリは波紋法(スタンド)と呼ばれる特殊な気泡特技を使う戦闘の達人で、DIOに恨みを持つツェペリはジョジョ波紋法を習得させることを決め、ジョジョは試しに放ったスタンドが絶大な威力を発揮したことからDIO打倒の可能性も見え、ツェペリに師事することになります。そしてスタンドの基礎をおさえたジョジョはついにDIOのいる根城に到着し、DIOが召喚した2人の騎士を倒し(ツェペリの犠牲を払いながらも)、ついにDIOとの因縁の戦いが再スタートを切りました。DIOの体は触れただけで全身を凍結させてしまう、恐ろしい体質を有しています(ONE PIECEの青キジみたいですね)。しかし、その突破口を開き、DIOの体を真っ二つに両断したジョジョは、その場で疲労がたたって倒れ込み、DIOは屋上のテラスから落下してそのまま消滅。 

 

・・かと思いきや、DIOはちゃっかり頭部だけ生きていました。(ターミネーターさながらのしぶとさですね)

 

このとき、ジョジョの目には涙の跡がありました。いくら敵とはいえ、自分とともに青春時代を乗り越えてきた元親友のDIOを倒すことに抵抗があったのでしょう。

 

 

その後、ジョジョはエリナと豪華船で祝杯をあげ、乾杯しました。末永い幸せを願っていた矢先、船の倉庫に保管されていた宝箱の1つが、どこか様子がおかしい。宝箱の隙間からはほんの一筋の光が漏れ、なぜか声まで聞こえるというスリラー。そう、ここにはジョジョが倒したはずのDIOの頭部が収められていたのです。そして・・

 

 

ジョジョDIOの存在に気づき、呆気に取られてしまいました。頭部のみ残したDIOは自分を「情けない姿」と卑下しながら自分をここまで追いやったジョジョの実力を讃え、ジョジョの下半身を奪って自分と一体化させるという結論に至りました。しかし船はすでに爆薬に火がついた状態で、今にも大爆発を起こしそうな、一触即発の様相を呈していました。そんな中、DIOは船が爆発する前にジョジョの体と融合するためにジョジョを拘束しますが、ジョジョは最後の力を振り絞ってDIOの顔面を凶器で切り付け、その場でDIOジョジョの懐に抱えられたまま絶命しました。もちろん、ジョジョ自身も・・。その場に居合わせたエリナはDIOが入っていた宝箱に身をくるめ、なんとか窮地を逃れました。エリナはジョジョの生き方を尊敬し、最後涙を流しました。

 

 

といったストーリー構成となっています。非常にざっくりでかなりの部分を端折っていますが、ストーリーの根幹を揺るがす呪いのアイテム、それが「石仮面」です。石仮面はそれを被せた人のパワーを引き上げ、恐ろしい吸血鬼と化させてしまいます。実際、噛まれた人は次第にゾンビ化していき、主(この場合はDIO)に全てを捧げる服従マシーンになってしまうのです。こういったスリリングな恐怖映像からリアルな戦闘描写まで、きめ細かに描かれるのがジョジョの醍醐味。見てる視聴者にも痛みや辛さなどがヒシヒシと伝わってきます。しかし自分がジョジョにどっぷりとハマる理由はそこではありません。これではいくら動きにキレがあろうが、その延長線上で言えば普通の「バトルもの」に過ぎません。しかし、ジョジョには他の作品とは一線を画した要素があるのです。いわば、ここが差別化の要因ともなりうるストロングポイント、それが「ダークヒーロー」の存在です。

 

いわゆる「もう1人の主人公」といった表現が伝わりやすいかもしれません。確かにこの作品の主人公はジョナサン・ジョースターこと第1部におけるジョジョです。しかし、主人公ジョジョとともに青春時代を乗り越え、友情を育んできたDIOの存在、しかし、ジョジョと違い、ある手違いから闇堕ちしてしまうDIOは、まさに真っ当に生きるジョジョとは対比的に描かれています。DIOは力が支配する世界に喜びを示し、自分が絶大な力を手に入れたことで、それが実現した。いわば「野望の塊」とも言える人物です。(財産狙いもしかり)しかし、ジョジョはそういったDIOの支配的野望とは無縁の生活を送ってきました。なぜならば、ジョジョDIOと違い、裕福な豪邸で幼少期を過ごしてきた貴族だからです。つまり、欲しいものは簡単に手に入る、という環境に置かれていたからこそ、ジョジョDIOが持つ強大な野望には理解ができなかった。そのジョジョに初めてライバルという存在に気づかせてくれたのが、紛れもないDIOなのです。DIOジョジョの青春の一部でもあり、自身の成長の助けともなった存在。それゆえ、DIOに手をかけるのは身を裂かれる思いだったのでしょう。しかし、父親がDIOに殺された以上、もはや背に腹は代えられない。本当によく作り込まれたストーリーだなと思いました。アニメではたまに作者の手腕が生きたシーンとも言える場面がありますが、ジョジョは常に作者の手腕が光り輝いてますね。