アカデミー賞授賞式

 

ーーアカデミー賞授賞式

闇深き「差別意識」の表れ

 

2024年3月10日、アメリカで行われた96回アカデミー賞授賞式において、ある参加者の差別意識が浮き彫りになりました。この年にアカデミー賞の受賞者となったのは2人。ミシェル・ヨーキー・ホイ・クァンです。それぞれ主演女優賞と助演男優賞をプレゼンターから贈呈されました。栄えあるアジア系俳優では初の受賞となっただけに歓喜の声がどっと上がりました。しかし、それを無碍にしてしまうほど”ある人物”の無礼極まりない態度が取り沙汰されてしまったのです。その人物とは、アイアンマンの主演を務めたハリウッド俳優でよく知られるロバートダウニーJr.氏。彼はプレゼンターとなったクァンからトロフィーを受け取ろうとしますが、その際クァンに視線を向けることもなく、その後参列していたハリウッドの関係者には笑顔で握手を交わしました。これはアジア系民族に対する重大な差別意識の表れ・・とみて間違いないでしょう。

 

さらにこの問題の争点として、「マイクロアグレッション(自覚のない差別)」の事実が挙げられると思います。マイクロアグレッションは聞きなれない言葉だと思いますが、何気ない動作や態度などが特定民族に対する差別や偏見を助長させてしまう行為のこと。つまり、ヘイトクライムや普通の差別と違い、「自覚症状がない」ところが特徴です。ロバートはまさにこの例でしょう。普通、アカデミー賞の授賞式にて、ハリウッドの最先端を走る俳優が明確な差別意識を露呈させてしまうのは、許し難い行為でしょう。しかし、今回のロバートの何気ない動作が、アジア系民族や白人に対する差別意識に大きなメスを入れてしまった。自覚なき症状のため、罪の意識すらも感じていません。非常に由々しき事態だと実感しています。

 

数年前、黒人が白人の警官に殺されるという痛ましい事件がありました。それは黒人差別を一層助長するとともに、黒人による「ブラック・ライブズ・マター運動」を引き起こし、人種差別の撤廃の一助にもなり得る大規模なデモクラシーが起こりました。この運動は黒人が歴史から白人に虐げられてきた差別に対する最大の反対意思表示です。これ以上のメッセージはありません。黒人差別撤廃を訴える歴史から通算して約600年以上。アメリカでは差別意識の払拭と人種間争いの根絶を目指し、さまざまな活動が試みられています。このアカデミー賞授賞式は物理的な被害はもちろんなかったとはいえ、黒人からアジア系人種に対する立派な冒涜行為であり、差別意識を一層広げるような出来事になったと思います。

 

世界を代表するハリウッド俳優がこのような差別に基づく動作に出たこと、そして自覚のない差別意識をどのように払拭し、人種間における隔たりや垣根を取り除くか。人類最大の普遍的な課題といえますね。